2016年センター生物基礎講評

2016年度のセンター生物基礎の講評です。

下線部で強調していますが、2017年度にも同様の出題が見られる問題が複数見られます。

センター試験は過去問の分析が大事だということがわかります。

 

全体講評

思考を有する問題が、第1問の問2、第2問の問3、第3問の問4とバランスよく配置されている。

この3問をしっかりと取り切れるかどうかが勝負をわけるといえる。

知識問題に関しては基本的なものが多いが、「曖昧に覚えている人を引っかける用選択肢」が巧妙に作られているため、

中途半端な知識だと逆に間違いを選んでしまうだろう。

正確な知識が求められるのは言うまでもない。

第1問

問1 【ミトコンドリア】

数研出版 p28,29「生物に共通する細胞構造」 p32「電子顕微鏡で見ることのできる真核細胞の共通構造」 p50「ミトコンドリアと葉緑体の由来」

ミトコンドリアに関する知識問題。

①の「ミトコンドリアの内部の構造は、光学顕微鏡によって観察することができる」は誤った記述だが、ここに迷った受験生は多いだろう。

教科書には細胞の構造として、ミトコンドリアと葉緑体がただの○で表現されている図と、

こまかく内膜が書いてあったり、小胞体やゴルジ体が書いてある図の2つがある。

この2つの図は、光学顕微鏡で見た場合と電子顕微鏡で見た場合の違いである。

このことを知っていれば、①の選択肢は迷わなくて済む。教科書を大切に、とはこういうことでもある。

 

問2 【酵素反応とその変異体】

数研出版 p40「代謝と酵素」

この実験はビードルとテータムによる、アカパンカビの実験が下地にある。

遺伝子は何の設計図なのか?を示した重要な実験だが、生物基礎の教科書に記載はない。

条件を整理していけば正解にたどり着くことはできるが、この問題に触れたことがない受験生には厳しかったと思う。

なお、僕の「授業ノート」では遺伝の分野でこの実験には触れる。

 

問3 【物質の構成元素】

数研出版 p36,37「エネルギーの通貨 ATP」 p62「DNAの構成単位」 p70「RNAとそのはたらき」

ATP、DNA、RNAは知っていても、その構成元素ときて困った受験生は多そうだ。

「物質」に関しては2017年にも出題があり、今後も間違いなく出題されるだろう。

 

問4 【DNAとRNAの違い】

数研出版 p62「DNAの構造」 p70「RNAとそのはたらき」

あまりに基本的。

 

問5 【転写と翻訳】

数研出版 p70「遺伝情報の流れ」

あまりに基本的。問4、問5と、このレベルの知識問題では出題の必要がないのではないか。

とはいっても、生物基礎の範囲に厳密に抑えた「転写・翻訳」の問題がつくりにくいのもわかる。

 

問6 【タンパク質】

数研出版 p72「遺伝情報の翻訳」 p76「体内に取り込んだタンパク質とアミノ酸の関係」

正解の選択肢である「同じ個体でも、組織や細胞の種類によって合成されるタンパク質の種類や量に違いがある」とは、「組織や細胞の種類によって発現する遺伝子が違う」ということを示している。

同様の内容が2017年にも出題されている。こちらの問題の方がやや変化球気味か。

②の「食物として摂取したタンパク質は~」という記述は、教科書の「参考」部分に記載がある。

教科書はすべてのページをしっかりと読むこと。

第2問

問1 【組織液】

数研出版 p98「ヒトの体液」

「組織液の大部分は、再び毛細血管内に戻って血しょうとなるが、一部はリンパ管内に入ってリンパ液となる」という教科書の記述の通り。

つまりおおざっぱに言うと、組織液≒血しょう≒リンパ液なのだ。

これはそのまま2017年にも同様の出題がある

 

問2 【肝臓】

数研出版 p112「血中物質と生成と調節」

「尿素の合成」と「胆汁の生成」。どちらも肝臓の基本的知識である。

 

問3 【腎臓と尿生成】

数研出版 p107「ろ過と再吸収」 p109「有用成分の再吸収と老廃物の濃縮」

素晴らしい問題。

原尿計算はまるでテクニックのように公式があったり、意味もわからず計算手法だけ覚えている受験生がいるが、それは通用しないことを示してくれた。

腎臓による尿生成は、公式に頼ることを早々に諦めて、丁寧にじっくり理解することが必要だ。

この問題の良さはイヌリンがないことと、表をよく見ないと数値の示しているものを勘違いしてしまう部分にある。

さらに、計算せずに選択肢を選ぶことができ、間違いの選択肢の「900」は、表の数値の「0.03と27」でなんとなくそれっぽいのが素敵な演出。

 

問4 【血液循環】

数研出版 p99「ヒトの循環系」

基本的。左心室が全身へのポンプの働きをする。

したがって、全身へ送り出す強い力が必要なので、左心室の筋肉は厚くなる。

2017年もこの循環は出題された

 

問5 【ホルモン調節】

数研出版 p119「ヒトのおもなホルモン」 p121「ホルモンの分泌量の調節」

基本的。・・なのだが、正答率は良くないだろう。

各種ホルモンはもう必ず出題されるのだから、諦めてしっかり覚えよう。

正解の選択肢自体は「フィードバック調節」で有名だ。

 

第3問

問1 【バイオーム】

数研出版 p163「気候とバイオームの関係」

基本的。バイオームも必ず出ます。

 

問2 【雨緑樹林】

数研出版 p165「雨緑樹林」

チーク!?どうしよう・・とならないように。

チークは雨緑樹林だと直前の文章で説明されている。

雨緑樹林の特徴は乾季に落葉し、雨季に葉をつけることにある。

だから、「雨」季に「緑」の葉をつける「樹林」という名称なのだ。

 

問3 【サバンナ】

数研出版 p168「サバンナ」

アカシアがわからなくても、他が有名なのでこれは消去法で選ぶことになるはず。

各バイオームにおける代表的生物名は覚えておく必要がある。

 

問4 【生態系】

数研出版 p194,195「生態系のバランス」

原因として考えられないものを選ぶということで、バランスが崩壊するものを選ぶ。

ここまでの問題のセットからするとやや特殊な問題。

 

問5 【人間活動と生態系】

数研出版 p199~202「人間活動と生態系」 p203「生態系の保全」

消去法では選びきれないと思うが、正解の選択肢が有名事例なので選べたと思う。

 

以上