【高校生物】光合成①:チラコイドでの反応
目次
光合成は何をする反応なのか?
そうです。「二酸化炭素と水からデンプンをつくる」反応ですが、
光合成全体の反応を理解するためには、
二酸化炭素CO2をグルコースC6H12O6にする反応
と捉えた方が良いでしょう。
そうです。しかしこのように捉えることで、
化学式で光合成を考えることができるようになります。
つまり、
CO2をC6H12O6にするためには
明らかにHを加えなければならないこと
や
C6H12O6を1分子作るためには
少なくともCO2は6分子必要であること
(炭素数を見ています。グルコースはCが6個ある化合物だからです)
が見えてくるような気がしませんか?
また、CO2という単純なものを
C6H12O6に変える反応であるため、これは同化反応です。
さて、同化反応に必要なものはなんでしたっけ?
正解です!
同化反応にはエネルギーが必要でしたね。
さて、これで準備が整いました。
二酸化炭素CO2をグルコースC6H12O6にする反応
である光合成には
Hが必要であり、
エネルギーであるATPが必要である。
ここを出発点として、全体反応に進んでいきましょう。
チラコイドの反応とストロマでの反応の役割分担
光合成の反応は、大きく2つに分けられます。
それが「チラコイドでの反応」と「ストロマでの反応」
すなわち場所で反応をわけているということです。
さて、今回は「チラコイドでの反応」のみを扱いますが
最初にこの2つの反応の役割分担の話をしてしまいます。
簡単に言うと
チラコイドでの反応が材料集めで
ストロマでの反応が組み立てです。
さて、では材料集めを始めますよ。
チラコイドでの反応:光化学反応
では、今回の主役であるチラコイドを拡大します。
チラコイドはチラコイド「膜」とも呼ばれる生体膜であり、
細胞膜と同じようにリン脂質二重層で構成され、各所にタンパク質が埋め込まれています。
埋め込まれているタンパク質の場所には、光合成において重要な名前があります。
それが「光化学系Ⅱ」と「光化学系Ⅰ」です。
この2つは発見の順番に「ⅠとⅡ」という名前がついていますが、
光合成の反応を考える際には「光化学系Ⅱ」から考えた方がわかりやすいかと思います。
この光化学系には「クロロフィルa」と呼ばれる光合成色素(青緑色)があり、
この光合成色素が光合成の中心となります。
(光合成色素はクロロフィルbやキサントフィルなど他にも存在しますが
光合成の反応の中心はクロロフィルaであるため「反応中心クロロフィル」とも呼ばれます)
そして光合成は、
クロロフィルaに太陽光が当たったところがスタートです。
光が当たると、
クロロフィルaは光のエネルギーで励起状態になり電子を放出します。
この「光が当たって電子を放出する」反応を「光化学反応」と呼びます。
そんなイメージです。
(実際には光のエネルギーで電子が1つ外側の電子殻に移動するため、
反応が起こりやすくなり、この状態を励起状態といいます。励起状態の反対が基底状態です。)
さて、電子の流れをイメージしてみてください。
光化学系Ⅰには光化学系Ⅱから流れてきた電子が来ますので、
光化学系Ⅰのクロロフィルaは結局電子を失いません。
しかし、光化学系Ⅱ(左側)のクロロフィルaは電子を失っただけになってしまい、
激しく電子を欲するようになります。
そして次は
失った電子をどうにかして取り戻してやろう
という反応が起きます。
チラコイドでの反応:水の分解
そこに目をつけられたのが水です。
生体内に大量に存在する水分子H2Oからクロロフィルaは電子を引き抜きます。
すると
2H2O→4H++2e–+O2
という反応が起きますね。
このとき酸素が発生するために、光合成では酸素が発生します。
しかし、目的は酸素を発生させることではなかったはず。
水の分解(水から電子を引き抜く)反応の副産物としてたまたまできちゃっただけなんです。
だから、不要なんですね。捨てちゃうんです。
したがって光合成反応は「植物が酸素を作るためにやっている」と言ってしまうのは
とても大きな間違いになります。
チラコイドでの反応:電子伝達と能動輸送
さて、チラコイド膜内を流れている電子ですが、
最終的にはNADP+がH+と一緒に電子を受け取り、
NADPHとなります。
この受け渡しの場所が「光化学系Ⅰ」となります。
ここで重要なことですが、
電子が膜内を移動する、すなわち「電子伝達」が起こるとエネルギーが生まれます。
呼吸ではまさに「電子伝達系」として学習しましたが、
光合成でもここでは電子伝達が起こっています。
この電子伝達によるエネルギーを用いて、
ストロマにあったH+をチラコイドの膜内部に能動輸送します。
これは次の「光リン酸化」の準備です。
チラコイドの反応:光リン酸化
H+がチラコイド内にどんどん能動輸送されていくと、
チラコイド内とストロマ間でH+の濃度の差、すなわち濃度勾配が生じます。
濃度勾配があると受動輸送によって濃度差を解消しようとしますが、
細胞膜はイオンを通しません。
しかし、そんなときにちょうどよく穴が空いていたら
H+は通ってしまいますね。
その穴こそが「ATP合成酵素」であり、
この中をH+が通るとそのエネルギーを利用してATPを作り出します。
このように、電子伝達による濃度勾配でATPが作り出される。
元をたどればこの濃度勾配は「光化学反応」によってもたらされたものです。
したがってこのATP合成を「光リン酸化」と呼びます。
(ATP合成はADPにリン酸をつける、すなわちADPをリン酸化することになります。
これは光を駆動力としたリン酸化だということです。呼吸の場合は有機物の酸化
によるエネルギーが駆動力となるため、酸化的リン酸化と呼びましたね。)
さて、これでストロマの反応は終わりです。
色々と長い反応でしたが、
最終的にできたものはなんですか?
そうです。
チラコイドの反応でできたものは
NADPH と ATP
すなわち、
CO2にこれからつけるためのH
同化反応に必要なATP
この2つを作っていたのです。
だからチラコイドでの反応は「材料集め」
このあとストロマでの反応で「組み立て」を行なっていきましょう。