【生物基礎】細胞性免疫「正の選択・負の選択」を解説

ココケロくん
適応免疫の特異性・・。なんか「特異性」ってどこかで聞いたような・・・。
ココミちゃん
そうね、あなたは絶対にどこかで聞いているわ、ココケロくん。
ココケロくん
思い出せません・・!!!!
ココミちゃん
基質特異性
ココケロくん
あー、なんでしたっけそれ。
ココミちゃん
酵素は反応する相手が決まっているの。「相手」が決まっている。それが、「特異性」。
 
 
 
 
 

免疫②で説明したように、適応免疫にはそれぞれ「担当者」が決まっており、

樹状細胞が提示した抗原が自分の「担当」だった場合は適応免疫をスタートさせて排除します。

しかし、自分の「担当」ではなかった場合、リンパ節をパトロールしに出かけていきます。

では、実際にT細胞は、どのように「自分の担当かどうか」を見分けているのでしょうか。

その判断に用いているのが、「TCR(T-cell recepter)」なのです。

 

 

ココケロくん
TCR・・。なんか覚えづらいなあ。
ココミちゃん
T-cell recepterの略称よ。T細胞受容体ってことね。T細胞が抗原を受け取るためのものだから、T細胞受容体。そう考えたら、なんとかなりそうじゃない?
ココケロくん
なるほどなあ~。でも、TCRで見分けるってどういうこと?
ココミちゃん
TCRの形に合うものが、自分の担当の抗原なの。TCRという入れ物を使って、その入れ物に一致した抗原を認識してるって感じね。
ココケロくん
へー。でもさ、特異性があって抗原には担当者のT細胞が1人だけってことは、T細胞がものすごい種類必要じゃない?
 
 
T細胞はその細胞表面にあるTCRというタンパク質を用いて、抗原を認識します。
 
しかし地球上に存在する「抗原」は凄まじい種類があり、抗原に特異的に反応するTCRもまた、
 
凄まじい種類を用意しておく必要があります。
 
したがって遺伝子の再編成を繰り返し、多種多様なTCRを持つ、多種多様なT細胞を用意しています。
 
 
 
しかし、多様なTCRを持たせ、「あらゆるものに反応できるよう」にT細胞を用意しておくと、
 
「自分自身にも反応してしまう」TCRを持つ、
 
「自分自身にも反応してしまう」T細胞が存在してしまうことにもなります。
 
 
 
ココケロくん
どんなものにでも攻撃できるようにした結果、自分自身も攻撃対象になってしまう、ってことだね。
 
 
 
そうです。そのため、そのような危険なT細胞は排除する必要があります。
このT細胞の排除・選別を理解するためにはもう1つ、MHCというものを知っておくべきです。
 
 
 

実は、樹状細胞が行う「抗原提示」は、抗原のみが提示されているわけではありません。

細胞の表面には「MHC」と呼ばれる、その個人特有のタンパク質が提示されていることが多いです。

樹状細胞も例外ではなく、自らのMHCの上に抗原を乗せて「抗原提示」を行います。

そしてT細胞は、TCRによってMHCと抗原を同時に認識しています。

 

ココケロくん
MHC・・。これもまた覚えづらい。
ココミちゃん
これはたしかに覚えづらいよね。個人で顔が違うように、細胞表面のタンパク質もまた違うって感じかなあ。
ココケロくん
ふーん。ところで、MHCと抗原を同時にってどういうこと?
ココミちゃん
T細胞は抗原だけじゃなくて、MHCも認識しないと攻撃開始しないということよ。これが、「自分自身を攻撃してしまうT細胞」を排除するときに重要なの。ちょっと次のを見て。
 

 

T細胞はB細胞と異なり、胸腺で分化・成熟します。

胸腺で分化・成熟したT細胞は抗原提示を受け、抗原を認識する能力を持ちます。

では胸腺では何が行われているのでしょうか?

一言でいうと、胸腺はT細胞に教育を行う学校なのです。

 

 

ココケロくん
学校・・?
ココミちゃん
そう。胸腺上皮細胞という先生に教えてもらっているの。
ココケロくん
教えてもらうって、何を?
ココミちゃん
2つあるわ。「ちゃんと反応できること」と「自分自身に反応しないこと」の2つ
 
 
 
TCRはMHCと抗原を同時に認識します。
 
 
すなわち、ある程度はMHCと形が合うTCRじゃなければ絶対に反応できないということです。
 
 
したがって胸腺ではまず、MHCとある程度、形の合っているTCRを持つT細胞が選別されます。
 
 
これは「合格者を選ぶ」選択であり、「正の選択」と呼ばれます。
 
 
 
しかし形が合ってるといっても、抗原が乗っていないのにMHCにぴったり形が合う場合、
 
 
抗原が乗っていなくてもTCRは反応してしまうことになるので、
 
 
自分自身のMHCに対して攻撃を開始してしまいます。
 
 
つまりこの場合、「自分自身を攻撃するT細胞」となります。
 
 
したがって、胸腺ではMHCと強く反応しすぎるTCRを持つT細胞は危険なので排除されます。
 
 
これは「不合格者を排除する」選択であり、「負の選択」と呼ばれます。
 
 
 
なお、いずれの場合も、選択されなかったT細胞は遺伝子の再編成を受け、新たなTCRを作ります。
 
 
また、この「正の選択・負の選択」は完璧ではなく、
 
 
自己を攻撃してしまう可能性のあるT細胞は多少残ってしまいます。
 
 
ですが、生体には「制御性T細胞」というリンパ球がおり、
 
 
そのような危険なT細胞を制御し、抑え込んでくれています。
 
 
 
 
 
 
ココケロくん
なるほど・・。胸腺では負の選択によって自分自身を攻撃するやつは排除されてるんだ。
ココミちゃん
そう。だからB細胞と違って、自己・非自己の認識を行うことができるわけね。
ココケロくん
すごい仕組みだな~~!B細胞にはこんなすごい仕組みないのかなあ?
ココミちゃん
ふふ。B細胞もあるのよ。
ココケロくん
B細胞もあるの?!
ココミちゃん
うん。だって、「適応免疫」には特異性があるのよ。細胞性免疫だけじゃなく、体液性免疫にだって特異性があるわ。その秘密は「抗体」よ。
ココケロくん
抗体・・・!いやー、次も楽しみだ!
ココミちゃん
なるべく更新早くするわね。
ココケロくん
更新?なんの話?
ココミちゃん
いえ、なんでもないわ。