DNAはヌクレオチドが多数つながって鎖状になり、これが塩基の部分で2本結合したものである。
DNAの大きさを表す単位としては「塩基対」が用いられ、2本の鎖からなるDNA中で結合した2つの塩基を1塩基対という。
ショウジョウバエの染色体数は2n =8である。
また、ショウジョウバエのゲノムの大きさは140×10⁶塩基対である。
(1)ショウジョウバエの1本の染色体中のDNAは平均するとおよそ何塩基対か答えよ。
(2)ショウジョウバエの体細胞1個には何個のヌクレオチドが含まれているか答えよ。
(3)ショウジョウバエの精子1個には何個のヌクレチドが含まれているか答えよ。
はい、落ち着いて。まず、「ゲノム」って言葉わかる?
相同染色体のどちらか片方を集めたもの、と教科書には書いてあります・・
ゲノムとは?
まずは「ゲノム」とは何か?から話をしましょう。
ココケロくんが言うように、教科書では「相同染色体の片方だけを集めた1セット」もしくは、
「生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報の1セット」というふうに書いてあります。
この2つの表現はともに同じことを違うかたちで述べているだけであり、
「生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報の1セット」は「相同染色体の片方だけ」で良いと言うことでもあります。
ゲノムとは何かを理解するために、まずは相同染色体というものの正体に迫っていきましょう。
相同染色体
まずは我々「ヒト」で考えます。
わたしたちの体細胞1個の中には何本の染色体がありますか?
その通りです。
なお、「染色体じゃなくてDNAじゃないの?」と思った人もいるかもしれません。
染色体は「DNA +タンパク質」という構造の物質です。
ここで重要なのが、この46本の染色体はどこからきたのか?ということです。
我々の体には平均して60兆個ほどの細胞が存在しています。
しかし、それは元を辿ればたった1個の細胞に行き着きます。
それこそが「受精卵」
受精卵の分裂の結果が我々であり、我々の体細胞は46本の染色体を持ちます。
したがって、体細胞の元であった受精卵もまた、46本の染色体を持つはずです。
受精卵は「精子」と「卵」と呼ばれる配偶子(合体能力を持つ特殊細胞)の合体によって生まれます。
もし仮に「精子」も46本、卵も46本の染色体を持っていると、
合体の結果は46+46=92本となり、ヒトとは異なる染色体の本数を持つことになってしまいます。
したがって、配偶子は通常の染色体数の半分でなければならず、
その半分と半分を足し合わせることで元の染色体の本数を生み出していることがわかります。
すなわち、我々は父(精子)からの23本と母(卵)からの23本という、
「23本を2セット持つ」という状態になります。
例えば父からの23本のなかには「父の体を構成する遺伝情報」が入っています。
同様に、母からの23本のなかには「母の体を構成する遺伝情報」が入っています。
たとえば「父と同じ耳の形にする遺伝情報」は父からきて、
「母と同じ耳の形にする遺伝情報」は母からきます。
するとここで重要なことに気づきます。
「耳の形の情報」は2つぶんあります。つまり、ダブっています。
たしかに、父の耳と母の耳は異なるものなので、
その2つは「個体としてみると」異なるものでしょう。
しかし「ヒトという種としてみると」、
「ヒトという種の耳の形のつくりかた」という情報はダブっている。
このダブっている情報を持つ染色体同士を、相同染色体と呼びます。
ヒトは23本を2セットもらうため、23組ぶんの相同染色体があり、
その形・大きさも基本的に相同となります。(基本的に、の理由はXとYの性染色体の違いです)
ふたたび、ゲノムとは?
ココケロくんが言うように、教科書では「相同染色体の片方だけを集めた1セット」もしくは、
「生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報の1セット」というふうに書いてあります。
この2つの表現はともに同じことを違うかたちで述べているだけであり、
「生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報の1セット」は「相同染色体の片方だけ」で良いと言うことでもあります。
何故、片方だけでよいのか?
それは相同染色体とはそもそもがダブりだからです。
片方だけで「生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報」はあるのです。
まあ、その片方だけで生物を形成したら、父か母の完全コピーであるクローンにはなりますが。
私たちは1セットと1セットを混ぜ合わせて使用することにより、父でも母でもない個体となっています。
最後に、我々の染色体の構成はこのように表現されます。
2n=46
両辺を2で割って「n=23」と書きたくなりますが、
これは数式ではなく、「表現方法」なので割ってはいけません。
「2n」と書くことで、2セット分存在していることを表現し、
2セット分存在していることから父と母を持つ「有性生殖」の生物であることもわかります。
ですから、これを「n」とすると意味が変わるのです。
ちなみに確認ですが、「2n=46」の生物(ヒト)のゲノムは23本です。
ゲノムとはどちらか片方でいいわけなので。
ヒトのゲノム
ヒトのゲノムは、23本です。
しかしそれは「染色体の本数で表現するならば」という注釈付きの話となります。
染色体の中にはDNAがあり、そこには塩基対があるので、
「塩基対の個数」で表現することも可能です。
するとヒトのゲノムは約30億塩基対となります。
さらに、DNAは遺伝子の本体でもあるので、
「遺伝子の数」で表現することも可能です。
するとヒトのゲノムは約2万遺伝子となります。
この3つの表現方法は、基礎知識として覚えておく必要があります。
ゲノムの問題演習
問題を解いてみます。
ショウジョウバエの染色体数は2n =8である。
また、ショウジョウバエのゲノムの大きさは140×10⁶塩基対である。
(1)ショウジョウバエの1本の染色体中のDNAは平均するとおよそ何塩基対か答えよ。
となっています。
ショウジョウバエが「2n=8」と表現されているため、ゲノムとしての染色体の本数は「4本」です。
さらにゲノムに「140×10⁶塩基対」含まれるとあるため、「4本のなかに140×10⁶塩基対」含まれることがわかります。
したがって140×10⁶塩基対を4で割った35×10⁶塩基対が正解となります。
(2)ショウジョウバエの体細胞1個には何個のヌクレオチドが含まれているか答えよ。
(3)ショウジョウバエの精子1個には何個のヌクレチドが含まれているか答えよ。
精子や卵などの配偶子は、体細胞と比べて「染色体数」が半減しているため、
ヌクレオチドの数も半減しています。
よって、(2)の半分の280×10⁶塩基対が正解となります。
以上。ゲノムの意味をしっかりと確認しましょう。