【センター試験生物】対策&予想問題:第1問
目次
センター生物 第1問と「タンパク質」
第1問の出題範囲は「生命現象と物質」です。
AとBふたつの問題にわかれており、正確な知識が求められる大問です。
オペロン説などの転写調節の話やPCR法も含まれており、
範囲としては非常に広範ですが、
今回は「タンパク質」に着目しようと思います。
過去のセンター試験の出題をみると、「タンパク質に関する正しい知識」を求められているからです。
タンパク質の階層構造
タンパク質には4つの階層構造があります。
構造の名前自体は簡単で、それぞれ
「一次構造」「二次構造」「三次構造」「四次構造」といいます。
判別に間違いが多いのは「三次構造」と「四次構造」です。
ここでは1つずつみていきます。
一次構造
![](http://kokomiro-seibutu.com/wp-content/uploads/2019/01/IMG_2776-1.jpg)
まずは「一次構造」です。
タンパク質はアミノ酸がペプチド結合によって繋がったものです。
タンパク質の性質は20種類のアミノ酸が、
どのような順番で、どれくらいの数がペプチド結合するかによって決まります。
したがって、アミノ酸の配列順序と配列総数は、
タンパク質の性質を考えるうえでは非常に重要となります。
この「アミノ酸配列」のことを「一次構造」といいます。
二次構造
タンパク質は「アミノ酸がつながったもの」ですが、
ただ繋がっているだけではその機能を発揮することができません。
タンパク質は固有の「立体構造」をつくる必要があるのです。
一次構造でつくられたアミノ酸配列によって、様々な側鎖を持つアミノ酸が存在することになります。
そのアミノ酸間で水素結合などが形成されると、ただ横並びだったアミノ酸が形をつくるようになります。
このとき形成される「らせん構造」や「ジグザグ構造」を二次構造といいます。
三次構造と四次構造
![](http://kokomiro-seibutu.com/wp-content/uploads/2019/01/IMG_2777.jpg)
二次構造が形成されていくと、一本のポリペプチド鎖は、
折りたたまれていき、全体で1つの立体構造をつくるようになります。
(ポリペプチドとはアミノ酸が多数つながったもののことです)
この状態を三次構造といいます。ミオグロビンやリゾチームといったタンパク質はこの三次構造をとっています。
さらに一本ではなく複数のポリペプチド鎖が集まって1つの構造をつくるとき、四次構造となります。
例として有名なのはヘモグロビンです。
つまり、三次構造と四次構造の大きな違いは、
一本なのか複数なのか、だということです。
タンパク質の変性とAnfinsenのドグマ
![](http://kokomiro-seibutu.com/wp-content/uploads/2019/01/IMG_2778.jpg)
多くのタンパク質は60度以上の熱で変性します。
生卵がゆで卵や温泉卵になる原理が変性です。
この変性は、熱やpHの変化によって
水素結合などが切断され、立体構造が壊れることから生じます。
ところで一次構造から四次構造のうち、変性後も残るものがありますが、
わかるでしょうか?
その通りです。
水素結合などが切れてもペプチド結合は切れず、
アミノ酸配列である一次構造は残ります。
かつてAnfinsenという研究者は変性したタンパク質を再び正しい立体構造に戻すことに成功しました。
これは「一次構造によってタンパク質の立体構造は規定される」ことを示しています。
一次構造によってどのようなアミノ酸がどのような順番になっているかがわかれば、
そのアミノ酸によって作られる結合もおのずと決まるのは当然のことです。
これはAnfinsenのドグマと呼ばれています。
この言葉自体は大学入試には出ませんが、考え方はたびたび出題されています。
立体構造をつくる「シャペロン」
![](http://kokomiro-seibutu.com/wp-content/uploads/2019/01/IMG_2779.jpg)
タンパク質にとって「立体構造」は不可欠なものだとわかりました。
からだの中にはタンパク質が正しく折りたたまれる助けをするタンパク質が存在します。
その名をシャペロンといいます。
シャペロンは、
「タンパク質の折りたたみを補助」「合成されたタンパク質の細胞小器官への透過を補助」
「正しく折りたたまれなかったタンパク質が移動するのを阻止」
「古くなったタンパク質の分解」
など、正常なタンパク質を作るためのさまざまな働きをしています。
生体内のタンパク質
神経系による情報伝達:イオンチャネル(タンパク質)
ニューロン内の輸送:微小管(タンパク質)
原形質流動:ミオシンとアクチンフィラメント(ともにタンパク質)
内分泌系:ペプチドホルモン(タンパク質)
免疫:免疫グロブリン(タンパク質)、MHC(タンパク質)
細胞接着:カドヘリン(タンパク質)、インテグリン(タンパク質)
酸素の運搬:ヘモグロビン(タンパク質)
酸素の貯蔵:ミオグロビン(タンパク質)
物質の輸送:モータータンパク質(タンパク質)
この他、酵素もタンパク質ですし、ナトリウムポンプもタンパク質です。
知らない単語があったらノートや教科書で再度確認をしておきましょう。
予想問題
学習効率を優先し、一文での正誤判定とします。
【1】側鎖にSを含むアミノ酸はシステインのみである。◯かバツか。
これはバツです。システインは確かに側鎖にSを含み、S-S結合を作ることで有名です。
しかし開始コドンでコードされることで有名なメチオニンもまた、側鎖にSを含んでいます。
含まれるSの場所が違うため、メチオニンはS-S結合は作りませんが。
【2】変性したタンパク質は一次構造が破壊されている。
これはバツです。先ほど説明しましたね。
【3】ヘモグロビンは2種類のポリペプチド鎖が2個ずつ結合し、球状の四次構造を作っている。
これは◯です。ヘモグロビンが四次構造だというのはよくでます。
【4】ペプチドホルモンは細胞膜を透過することができる。
これはバツです。できません。
インスリンやバソプレシンなどのペプチドホルモンは、
親水性であり細胞膜の疎水性の内部を通過できません。
したがってペプチドホルモンの受容体は細胞膜に存在する必要があります。
逆に糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドなどのステロイドホルモンは細胞膜を通過し、
細胞質基質や核内に存在する受容体と結合します。
【5】酵素も補酵素も熱に弱い。
バツです。
酵素の主成分はタンパク質ですので熱に弱いです。
しかし、補酵素は主にビタミンを成分とし、熱に比較的強いです。
【6】酵素と補酵素の結合は弱い。
◯です。この性質から、「透析」という操作で2つをわけることができます。
【7】同種のカドヘリンを持つ細胞は接着し、集合する。
◯です。人為的に異種の細胞を混ぜて培養しても、
同種の細胞があつまる「細胞選別」の理由となります。
【8】カドヘリンの立体構造の維持にはマグネシウムイオンが欠かせない。
バツです。正しくは「カルシウムイオン」となります。
カルシウムイオンを含まない培養液で細胞を培養すると、
細胞同士が解離しやすくなります。