【高校生物】呼吸② クエン酸回路
目次
クエン酸回路の役割
呼吸の反応は3段階に分かれています。
1つ目が「解糖系」
2つ目が「クエン酸回路」
3つ目が「電子伝達系」
です。
1つ目の解糖系でグルコースが酸化的に分解されてピルビン酸となります。
しかし、このピルビン酸はまだまだ複雑な有機物であり、
分解することでエネルギーを取り出すことができます。
このピルビン酸を更に分解する、
ということを細胞小器官の1つであるミトコンドリアが担当します。
ミトコンドリアは自身の内部空間
(ここをミトコンドリアのマトリックスといいます)に、
ピルビン酸を取り込み、分解を始めます。
これが、クエン酸回路です。
そうです、
実はこのクエン酸回路の炭素数や各物質の名称を
細かく問われることは滅多にありません。
各物質の炭素数は上図のように与えられることが多いです。
ということは・・・・
その通りです。
まずはココケロくんが気付いたように、
炭素数の変化
が最大のポイントになります。
解糖系でできた2個のピルビン酸は「C3」であり、
次の物質は「C2」です。
C3→C2
ということは炭素が1つどこかへ消えた、ということです。
どうして消えたかというと・・・
正解です。
二酸化炭素となって出ていきます。
CO2と表記される二酸化炭素は「炭素数1」の化合物ですね。
ちなみに2個出ているのは、ピルビン酸が2個あるからであり、
それぞれのピルビン酸から1個ずつ二酸化炭素が出て行くからです。
そしてここが重要です。
クエン酸回路とは
ピルビン酸(C3H4O3)を二酸化炭素(CO2)にまで分解する反応系
であるということができます。
ですから、二酸化炭素が出て行くのは当たり前なのです。
クエン酸回路の全体像
まず、試験に出るとこを覚えましょう。
①炭素数が減る場所からは二酸化炭素が出る。
これは先ほど説明した場所です。
で、あれば、
②炭素数が増える場所は何かと何かが合体している。
とも言えそうです。
その場所こそが、クエン酸回路の「回路反応の一番最初」です。
C2であるアセチルCoAとC4であるオキサロ酢酸が合体して、
C6のクエン酸ができています。
この部分がものすごくよく出ます。
クエン酸回路で絶対に覚えなければならない化合物は、
「ピルビン酸」「アセチルCoA」「オキサロ酢酸」「クエン酸」です。
それぞれの場所を、炭素数とともに確認してください。
なお、全ての化合物が「2個」なのは、スタートのピルビン酸が「2個」だからです。
その部分を厳密に説明するには高度な生化学の知識が必要です。
ですので、それぞれを非常に簡単に説明します。
③基本的には二酸化炭素を引き抜くときに水素(電子)も引き抜く
→ここから、NADHが生成されます。
④コハク酸からフマル酸の変化にはFADが使用される。
→機能はNAD +と同じです。
⑤6分子ぶんの水が加えられる。
→この反応は難しいですが、「ATPの加水分解」の逆反応が起きている場所が1箇所あります。
⑥ATPが合成される。
→⑤の話と重なりますが、クエン酸回路ではグルコース1分子から2分子のATPが合成されます。
なお、他の化合物の名称を聞かれることはまず無いですが、
という語呂合わせが存在します。
「クエン酸回路」ですので、「クエン酸」スタートの語呂合わせです。
クエン酸回路の化学反応式
この反応式からクエン酸回路の役割が見えます。
クエン酸回路はやはり、
「2個のピルビン酸」を「6個の二酸化炭素」にまで分解する反応系なのです。
そしてその反応の際に、「6個の水」が必要となり、
分解の際に水素(電子)を引き抜いていくので、
大量のNAD+とFADを使用し、
大量のNADHとFADH2を生成する反応です。
そして2個のATPを作ります。
まさしく、ココケロくんの言う通り、
ピルビン酸を頑張って分解したのに得られるATPが少ないです。
いえ、というより、
クエン酸回路の各分解段階で、ATPが出ている場所が1箇所しかないのが既におかしいのです。
この分解の際に放出されたエネルギーですが、
実は水素(電子)とともにNADHとFADH2のなかに蓄えられています。
よって、この蓄えられたエネルギーを、ATPに変換する必要があります。
ですので、呼吸の反応はこの後に3段階目を必要とするのです。
大量のNADHとFADH2
また、別の見方をすることもできます。
このNADHとFADH2はNAD+とFADからできています。
発酵の時に説明したことと同様に、
NAD+とFADは再生産しないと枯渇します。
よって、解糖系とクエン酸回路で生まれた大量のNADHとFADH2を、
NAD+とFADに戻す反応がこのあと必要なのです。
ですので、呼吸の反応はこのあとに3段階目を必要とするのです。
電子伝達系の化学反応式
電子伝達系に関する詳しい説明は次回ですが、
化学反応式だけ示しておきます。
この電子伝達系が、NAD+とFADを再生産する反応だと見えるはずです。
そしてその際、蓄えられていたエネルギーがATPに変換され、
電子伝達系だけで34ATPもの合成を行うことができます。
なお、
クエン酸回路で酸素は使用しませんが、
酸素が存在しないとクエン酸回路は止まります。
なぜですか?
まさしく、「発酵」からは呼吸全体を理解するのに学べることが多いです。
呼吸の反応が苦手な人は、まずは発酵から学び直してみると良いかもしれませんね。