【生物基礎】ゲノムの何%が遺伝子?問題の解き方を解説

ヒトのゲノムは30億塩基対から構成されている。

また、タンパク質をコードしている遺伝子は2万個ある。

DNAの一方の鎖だけが端から端まで読み取られると仮定し、

タンパク質の平均分子量を90000、タンパク質を構成するアミノ酸1個の平均分子量を120とする。

このとき、ゲノムの何%が遺伝子として利用されているか、少数第一位までで答えよ。

ココミちゃん
これは定番問題だけど、何度見ても混乱するわね・・。
ココケロくん
えーと、まてよ。まずは「何を聞かれているか」に線を引いてみる・・

ゲノムの何%が遺伝子?

ココケロくんの言う通り、大切なことは情報量に翻弄されずに、
何を聞かれているか」を明らかにすることです。
本問で問われていることは「ゲノムの何パーセントが遺伝子か?」なので、
我々は必然的にゲノムと遺伝子に着目していくこととなります。
ところで、「○○の何パーセントが●●か?」という問いがあったとき、
数学的にはどのような処理をすればよいでしょうか?
これは「全体では○○。そのうちの一部が●●。そのうちの一部とはどれくらいか?」ということなので、
「●●(一部)/ ◯◯(全体) ×100(百分率)」
という式になります。
したがって本問に同様な処理を施すと、以下のような立式となるはずです。

しかし、ここで問題が生じます。
ゲノムを遺伝子で割るということですが、以前に学んだように、
ゲノムには色々な表現法があるのです。

例えばヒトゲノムは23本の染色体数とも表現できますし30億塩基対とも表現できますし、
2万遺伝子とも表現できます。

ここでは、「2万遺伝子」はこれから使用する情報であり、染色体数の記載がなく、
ゲノムの塩基対数が明示されている」ことから、塩基対での表現を採用します。

すると分母は30億塩基対ですが、分子は遺伝子数2万となっています。
分母と分子で比較する際、その単位は同じである必要があり、
遺伝数2万を「塩基対の数」として変換する必要があることがわかります。

遺伝子を塩基対で表現する?

では遺伝子の塩基対数を探しますが、問題文のなかには見当たりません。

書いてあるのは何故かタンパク質とアミノ酸のことです。

ここで我々は「遺伝子とタンパク質の関係」と「タンパク質とアミノ酸の関係」を思い出さなければなりません。

遺伝子とはタンパク質の設計図であり、遺伝子があることでタンパク質が作られます。
したがって、タンパク質があるということは遺伝子があるということになります。

2万の遺伝子があるということは、2万のタンパク質ができているはずであり、
タンパク質はアミノ酸で出来ており、アミノ酸は塩基3つから作られます。

ここで、遺伝子→タンパク質→アミノ酸→塩基が繋がります。

さて、タンパク質の平均分子量が90000であるという情報があります。
タンパク質はアミノ酸がペプチド結合した後、立体構造を持ったものなので、
90000の中にはいくつかのアミノ酸があるはずです。

アミノ酸の平均分子量が120とあるため、
90000を120で割ってやることで、タンパク質の中のアミノ酸の個数がわかります。

アミノ酸の個数がわかれば、その3倍が塩基対の個数となります。
さらにこれは「タンパク質1個の平均分子量」から計算しているので、
1個のタンパク質の設計図である1個の遺伝子」の話です。
遺伝子数は2万であることが明示されているため、ここに2万をかけることになります。

以上より、分母が「ゲノムの塩基対の数」、分子が「2万遺伝子の塩基対の数」となり、
比較が可能となりました。

1.5%
これは衝撃的な数値でもあります。
我々のゲノムが持つ塩基対のほとんどは遺伝子としては使用されていないのです。
この秘密は、「生物」の方で扱われることとなります。

様々な知識を駆使し、なおかつ数学的な処理が必要ですので、
おそらく苦手な受験生が多い問題だと思います。

しかしそれは差をつけることができる場所でもあるということです。

ですので、ここでやり方を理解しましょう。

なお、センター試験で出題された際は「遺伝子数2万」は記載されておらず、
「知識として知っていることが前提」となっておりました。
ヒトゲノムの30億塩基対、2万遺伝子、23染色体数は覚えておきましょう。