平成30年度大学入試試行調査「生物」の解説[前編]
大学入試センター(https://www.dnc.ac.jp)によって行われた、
「平成30年度大学入学共通テスト試行調査」(プレテストとも言われます)の「生物」の解き方と考え方を説明します。
問題はここで公開されています(https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h30.html)
長くなったので前後編でわけました。
目次
- 第1問A
- 第1問B
- 第2問A
- 第2問B
第1問 A
まず第1問の問題を見ていきます。
「缶詰のツナを用いて骨格筋の観察実験」を行う、という設定。
顕微鏡像をスマートフォンで撮影した図1と
それを拡大した図2が与えられています。
「ちゃんと授業で実験してね」というメッセージが聞こえてきます。
さてここで着目すべきは、
「骨格筋であること」と「明暗の帯の存在」です。
骨格筋で明暗といえば、明帯と暗帯の話を思い出すはずです。
また、ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントによって
この明暗は生み出されており、
本問はそのことを聞かれています。
いままでは「明帯と暗帯」を直で聞いていましたが、
試行調査では(そして新入試では、)
それが「明帯と暗帯の問題であること」に
自ら気付く必要があるのです。
第1問 B
運動をする際のATP供給法を問われています。
ここで思い出すのは「解糖」と「呼吸」でしょう。
では、キとクのどちらが解糖でどちらが呼吸なのか。
これはグラフから読み取るのもなかなか難しいように思いました。
私が使ったのは誤りの選択肢は1つという部分です。
つまり、1つ以外は正しいことを言っている。
矛盾するものがあれば、それが誤りの選択肢である。
ということが言えるはずです。
さて、選択肢の下線部を「解糖」と「呼吸」にわけると、
①〜③は②を除いて「キは解糖である」と言っています。
④〜⑥はすべて「クが呼吸である」と言っています。
このなかで一人だけ違うことを言っているのは
②になるため、誤りの選択肢は②です。
第2問 A
近年流行の「花粉管誘引」がテーマ。
ポイントは実験から判断出来ることは何か?
と言うことでしょう。
例えば③の選択肢は「種子植物全体」は実験してないからわからないわけです。
④も同様ですし、⑤は「Eも花粉管誘引性質を持っていたら」言えないわけで、
⑤が「花粉管誘引性質を持っていない」ことを確かめる実験が必要ですね。
⑥も同様に、「誘引能力の差」は調べてないのでわかりません。
問2もデータの読み取りですが、
これも「読み取って切るもの」と「この実験からは判断不能だから切るもの」が混在しています。
例えば①の「異なる仕組み」は実験していないのでわからないのです。
問3は、「雑種が生まれないために必要なこと」という観点から考えます。
染色体数が違う、これは子供をつくれません。
開花時期が違う、これも子供をつくれません。
おしべとめしべの数、これは関係ないですね。何本であろうが、花粉が柱頭につけばいいわけなので。
花粉を運ぶ動物の種類が違う、これが違うと花粉は混ざらないので雑種になりませんね。
形成する種子の数、これは関係ないですね。
種子の形成率、これは関係あります。「雑種になると種子の形成率に異常をきたし、種子が形成されなくなる」という可能性があります。
種子の発芽率、これも考え方は同じです。「雑種になると発芽できなく」なれば、その雑種は繁殖しえません。
第2問 B
今回の施行調査(プレテスト)で個人的に一番面白かった問題です。
野外灯があることで、花芽形成に影響が出る。
教科書でいうところの「電照菊」を思い出す話です。
さて問5です。
日の出と日の入りの時間のデータがあるので、
いつからいつまでが暗いのかは調べられます。
花壇bを見てみると、3月10日に咲いているようなので、3月に入った辺りを見てみます。
すると、野外灯が消える19時から朝の6時過ぎの日の出までが暗期。
これは11時間より長く、3月10日に近づくにつれて暗期は短くなり、花が咲いてますね。
問6です。
花壇aのデータも花壇bのデータも、
種をまく時期が早くても開花は早くはなっていません。
つまり、単純な時間経過以上の何かが開花には必要だということです。
さて、問6の選択肢は気温に関するものばかりなので、我々は気温のデータを参照します。
すると、低温時期を経た後に開花するということがわかりますね。
面白いことに、問題はまだ続きます。
この種は「低温を経験する」必要があるため、
熱帯多雨林ではなく、寒冷地のバイオームである針葉樹林であることはすぐわかります。
つぎに、「種子の生存期間が短く、自家受粉では結実しない」ということは、
撹乱が起きて、生育のチャンスが来たとしてもそのチャンスを活かせないということです。
したがって、撹乱が起こる「ギャップ」ではない、ということです。
まだ続きます。
まず種子の時と植物体の時との乾燥重量の違いが、「成長量」にあたります。
するとXとYはともに395ですが、
Yには枯死量も被食量もあります。
純生産量とは「成長量+枯死量+被食量」なので、Yの方が大きいですね。
続いて「総生産量」ですが、これは「純生産量+呼吸量」です。
呼吸量がわからないことには判断できません。
「>>後編」に続きます。