【高校生物】呼吸① 解糖系とクエン酸回路と電子伝達系の役割
目次
呼吸は異化反応である、ということ
ところで「代謝」とはなんでしたか?
代謝が指し示す範囲は非常に大きいため、この「生体内の化学反応」を、
大きく2つに分けて取り扱うことにします。
それが「分解する反応」と「合成する反応」です。
「分解する反応」とは
「1つのものを異なるバラバラのものに変化させる」反応であり、
これを異化と呼びます。
「合成する反応」とは
「バラバラのものを1つの同じものに変化させる」反応であり、
これを同化と呼びます。
そして大切なのが
呼吸は
異化反応である
ということです。呼吸は異化反応であるため、
「分解する反応」です。
もっと言うと「分解することでエネルギーを取り出す反応」です。
これを常に意識しながら見ていくことになります。
呼吸Step1 解糖系
そうです。その感覚が大切です。
呼吸とは「分解してエネルギーを取り出す反応」であるため、
「たくさんエネルギーを持ってそうなもの」を分解すべきですね。
たくさんエネルギーを持ってそうなもの、それこそが炭水化物であり、
高校生物では単糖であるグルコースを分解する、というところから始まります。
このようにグルコースを分解して2個のピルビン酸にします。
Cが6個のグルコースがぱきっと2つに割れて、Cが3個のピルビン酸が2個できるイメージですね。
そうです。
というか、実は「発酵」もこの段階を「解糖系」と呼びます。
グルコースをピルビン酸に変えるのが「解糖系」です。
その後、「クエン酸回路」と「電子伝達系」に進んでいけば「呼吸」。
進まずに「NADHの酸化によりNAD +に戻す反応」が起これば「発酵」です。
どうして酸素があれば、
「発酵」でなく
「呼吸」を行うことができるの?
電気陰性度とNADHの酸化
電気陰性度とは、共有電子対を引きつける力の強さであり、
イオン化エネルギーと電子親和力の合力です。
簡単にいうと「どれくらい電子が好きか」の指標であり、
イオン化エネルギーと電子親和力の合力であることから、
「どれくらい電子を受け取りやすいか」の指標とも言えます。
では、ここでピルビン酸を見てみるとします。
C3H4O3
まだ、分解できそうだと思いませんか?
グルコースから分解したとはいえ、ピルビン酸もまだまだ複雑な有機物です。
ところで、グルコースをピルビン酸に分解する反応、
これがグルコースを酸化している反応だと気づいていますか?
Hがグルコースから外されており、そのために電子がグルコースから失われています。
電子は接着ノリの役割があるため、電子が失われると壊れやすくなります。
(鉄が錆びると脆くなるのも同様の理由です)
つまりこれはグルコースの酸化分解であり、
異化反応は基本的に酸化分解によって起こります。
そしてこのピルビン酸をさらに分解しようとすれば、
さらにHを外して酸化分解する必要があり、
その結果として大量に還元されたNAD +がNADHとして生成されます。
この大量のNADHを、NAD +に戻さなければなりません。
戻すためには、NADHのHと電子を誰かに受け取ってもらわないといけません。
「OがHを受け取って、水になる」ということ
電気陰性度の大きい酸素が大量にあれば、
大量の水素と電子を受け取ることができます。
つまり「呼吸」を行なってピルビン酸を分解するためには、
分解後の水素と電子の受け取り手が必要だということなのです。
言い方を変えると、NADHを酸化するために、
強力な酸化剤が必要であるということです。
呼吸では最終的に、酸素が「水素と電子を受け取って(還元されて)」水になりますね。
クエン酸回路と電子伝達系の本質的役割
「クエン酸回路」が本質的に担っている役割は
ピルビン酸を二酸化炭素にまで酸化分解する。
ことであり、
「電子伝達系」が本質的に担っている役割は
クエン酸回路で生じた水素と電子を、酸素に受け渡す。
になります。
よく、
「呼吸の過程で二酸化炭素はどこで発生しますか?」
「呼吸の過程で水はどこで発生しますか?」
という問題がありますが、
クエン酸回路の役割がピルビン酸を二酸化炭素まで分解すること、なので
当然、二酸化炭素はクエン酸回路で発生します。
電子伝達系の役割が水素と電子を酸素に受け渡すこと、なので
当然、水は電子伝達系で発生します。
発酵であっても、呼吸であっても、「解糖系」までは同じです。
その後の分岐は「酸素が利用できるかどうか」であり、
そのためには「酸素の存在」と「ミトコンドリアの存在」の両方が必要です。
ただどちらもやっていることは「有機物の酸化分解」によって「エネルギーを取り出す」こと。
ここを了承したうえで、クエン酸回路と電子伝達系の実際の反応メカニズムを見ていきます。