2017年センター生物基礎講評
ただ講評を書いても、あまり面白くないなあと思ったので、
今回から、その問題が教科書のどこに書いてあるのかを示していきます。
僕が教科書を重視する理由がわかるかと思います。
なお、使用教科書は数研出版さんです。
全体講評
あまりに簡単すぎると思います
思考を要する問題が存在せず、知識問題も平易である。
これでは勉強した受験生としてない受験生で差がつかず、選抜の意味を成していない。
しっかりと対策していた受験生は満点が当たり前の問題セットであった。
来年度もこの傾向でいくとは考えづらく、昨年並みに難易度は上がるのではないか。
また、必ず毎年計算問題が出題されており、
2015年は「遺伝子の計算問題」
2016年は「腎臓の計算問題」
2017年は「細胞周期の計算問題」である。
2018年は「ミクロメーターの計算問題」だと予想されるので、
いずれにしても計算問題に拒絶反応を起こさないことが大切である。
第1問
問1 【細胞に共通して含まれる物質】
数研出版 p45「クロロフィル」 p26「ATPはすべての生物に共通」 p101「ヘモグロビン」
生物の共通性という点から、「細胞」をピックアップし、なおかつその細胞の「物質」を聞いている問題。
「物質」が聞かれているので戸惑う受験生もいるだろう。
セルロースとクロロフィルが植物細胞、ヘモグロビンが動物細胞であるということを知っていればそれだけではある。
なお、数研出版には「セルロース」の記述がないが、水とATPが含まれることがわかれば選択肢は選べる。
本来的にはこの「物質」の話は「生物」の方がメインなのだが、生物基礎においても学習の必要性を感じる。
問2 【原核生物と真核生物の組み合わせ】
数研出版 p30「大腸菌やシアノバクテリア(ユレモやネンジュモ)など」&「下図に乳酸菌」
これは非常に頻出なので、絶対に出来てほしい問題。
よくある酵母菌がないのが珍しい。ちなみに酵母菌は真核生物だ。
問3 【細胞小器官の組み合わせ】
数研出版 p29「ミトコンドリアと葉緑体」
基本的すぎるので割愛。これ、出題する必要あるだろうか?
問4 【細胞周期】
数研出版 p78「G1期 S期 G2期 M期」
細胞周期を苦手する受験生が多いが、なぜだろうか?
おそらく、このG1、S、G2、Mといったものをただ暗記しようとしているからだ。
分裂のためにはあらかじめ複製が必要である。
すなわち「複製期→分裂期」となる。また、複製と分裂の前後には「ひとやすみ」の時間がある。
それがギャップ(隔たり)であり、ギャップ1とギャップ2である。
つまり、「ギャップ1→複製期→ギャップ2→分裂期」なのだから、
「G1期→S期→G2期→M期」は自然な流れではないだろうか。
問5 【細胞周期の長さ】
数研出版 p81「細胞周期と染色体の変化」
あえて言うなら教科書のここ、という感じで、実際はこの手の問題を解いたことがないと厳しい。
とは言っても超有名頻出問題なので解いたことの無い受験生はいないだろう。
計算問題が苦手、というのは論理的思考ができないということなので、「自分は苦手だから仕方ない」ではなく猛省して特訓すべし。
問6 【遺伝子発現】
数研出版 p84「細胞の分化と遺伝子発現」
基本的なのだが、「発現」を入れられるかは怪しい。だ腺染色体のパフも、同じ現象を示しているので要確認。
要するに、全ての遺伝子がそろっているのに各場所で機能が違うのは、「揃っていること」と「発現していること」は違うからだということ。
第2問
問1 【血液】
数研出版 p98「ヒトの体液」 p101「酸素解離曲線」 p102「フィブリンと血ぺい」
基本的ではあるが、消去法だと厳しいかもしれない。
血ぺいとフィブリン、という用語が並んでいたり、血しょうにはタンパク質は含まれない、という記述があったり、正確な知識が求められているからだ。
ちなみに正解の選択肢は「ヘモグロビン」の基本的性質であり、酸素解離曲線でしつこく扱われるところである。
問2 【循環】
数研出版 p99「ヒトの循環系」 p118「心臓拍動の調節」 p111「肝門脈」
p98に「組織液は血しょうが毛細血管から染み出したもので、組織の細胞を取り巻いている」という記述があり、まさしく正解の選択肢となる。
ただここには一切の太字はない。教科書をちゃんと読むというのは、このような地の文もしっかり読み込むことなのだ。
とはいっても、ここの知識は基本的。
⑤の肝門脈に引っ張られた受験生はいそうだが、もしこれに引っ張られていたら、肝門脈の意味がまったくわかっていない。
単に用語だけを繋げて覚えているとセンター試験は得点できません。
⑥のリンパ管は鎖骨下静脈で合流する、は何故かよく聞かれる。
問3 【水分量調節】
数研出版 p119「ホルモンによる調節」
脳下垂体後葉からはバソプレシンが放出され、バソプレシンは腎臓の集合管に作用し、水の再吸収を促進する。
全ホルモンの中でバソプレシンが圧倒的に出題が多い。おそらく腎臓と絡めやすいからだと思う。
脳下垂体後葉はバソプレシンしかないのだから、覚えられないとか言ってる場合ではない。
なお、同様に腎臓と絡めて出題されやすいホルモンは「鉱質コルチコイド」。
このホルモンは腎臓の細尿管(腎細管)でのナトリウムイオンの再吸収を促進する。
問4【体液性免疫】
数研出版 p134,135「適応免疫のしくみ」
基本的。樹状細胞が出てこなくても、選択肢の片側が「血小板」なのだから迷うこともないだろう。
「大量の抗体を産生」とあるので、B細胞の関わる体液性免疫だと判断できる。
問5 【二次応答】
数研出版 p136「免疫記憶」
ただの二次応答のグラフそのまんま。この問題、もっとなんとかならなかったのだろうか?
「鶏の卵白アルブミンによるネズミの抗体産生」など、しかるべきテーマはいろいろとありそうなのに・・。
免疫分野でこんなしょうもない知識問題だけでは拍子抜けになってしまう。
おそらく、来年度は工夫を凝らしてくると思われるが・・。
第3問
問1 【バイオーム】
数研出版 p163「気候とバイオームの関係」
三次元のグラフなので、おおっとなるが、各バイオームの位置さえわかれば大丈夫。
逆に言うと、各バイオームの位置がわからないと全滅なので、絶対にこの分野では覚えておかなければならない。
問2 【日本のバイオーム】
数件出版 p170,171「日本のバイオームとその分布」
図のXは夏緑樹林である。このバイオームが分布していない地域として、おそらく「九州」と「沖縄」で迷うことと思う。
ただ、九州には垂直分布において夏緑樹林が分布する。これは教科書にばっちりと記載してある。
また、困ったら一番特殊な「沖縄」を選んでしまうという乱暴な手もあるにはある。
問3 【生産者と消費者】
数研出版 p183「生態系における生物の役割」
誤っているものを選ぶ問題だが、誤り方が壮大なので、簡単だろう。
問4 【土壌の有機物】
数研出版 p152「土壌」 p158「遷移の進行と環境の変化」
この分野のことを詳しく知らなくても、文脈から選べそうな問題。
以上