【センター生物基礎】対策&予想問題:第3問
目次
センター試験第3問のテーマ
第3問は「多様性」に焦点が当てられ、
「生物多様性と生態系」が主なテーマとなっています。
今回はそのなかでも頻出である「バイオーム」に着目してみます。
バイオームの図の見方とは?
皆さんも確実に見覚えがある、バイオームの図である。
「バイオーム」は「植生」と「そこに住む動物」を合わせた概念である。
図に「植生」しか書かれていないのは、植生が決まればその植生に適応して生息する動物の種は決まるからである。
また、注意点としては各バイオームは各区切りで明確に別れているものではなく、
境目は曖昧な連続体だということです。
さて、バイオームは大きくわけて「森林」と「草原」と「荒原」の3つになります。
そのなかでも「森林」を形成するためには年間降水量が一定以上必要です。
したがって、バイオームの上部はすべて森林となり、中部が草原となり、下部が荒原となる、という大まかな分け方が可能です。
また、気温が高いと水が蒸発し、雲ができます。
雲ができると雨が降ります。
つまり、気温が高いほど降水量が大きくなっていきます。
このバイオームの図は四角形の右側半分になっていることが視覚的にわかるでしょう。
その理由がこれなのです。
森林のバイオーム
森林のバイオームでも特に、
「熱帯・亜熱帯多雨林」「照葉樹林」「夏緑樹林」「針葉樹林」の並びを、理解して覚えるようにしましょう。
この並びは特に「年間降水量の違い」によって植物がどのように環境に適応したか(「生活形」がどう違うか)を考えると丸暗記にならずにすみます。
<熱帯・亜熱帯多雨林>
このバイオームは年間降水量も年平均気温も高く、植物は光合成をたくさん行うことができます。
このバイオームの植物は「水不足」の心配をする必要がありません。
<照葉樹林>
このバイオームは「熱帯・亜熱帯多雨林」よりも「水不足」となります。
植物の水分は葉の気孔から出て行きがちです。
照葉樹林たちは、なるべく葉っぱからの水分の損失を抑えるため、葉っぱをコーティングしました。
それがクチクラ層であり、クチクラ層があるとツヤがあり、
光って見えるために、「照葉」の樹林と名付けられています。
<夏緑樹林>
このバイオームは「照葉樹林」よりも水不足となり、
更に年間降水量だけではなく年平均気温も落ちていきます。
そのため、冬季はあまり日光を浴びることができず、光合成の効率が落ちます。
したがって夏緑樹林たちはいっそ冬に葉っぱをつけておくことをやめました。
葉っぱをつけておくということはその維持のために栄養分やエネルギーを使用します。
得るものが少ない冬は、大きい葉っぱは必要なかったということです。
この夏緑樹林の特徴は、「夏のみ緑の葉があり、冬には落葉してしまう」ことです。
夏緑という名前にもそれが現れていますね。
<針葉樹林>
最後に針葉樹林です。
このバイオームは更に年平均気温が下がり、雪がたくさん降るようになります。
すると大きな広い葉っぱをつけると、積もった雪の重さで枝が折れてしまいます。
したがって、針葉樹林たちは大きな広い葉っぱをつけることをやめ、
「針のようにとがった葉で、雪が下に落ちるように」しています。
硬葉樹林はリゾートのイメージ
ところで、硬葉樹林だけ図の中で不思議な書き方がされています。
このバイオームは「地中海性気候」という特殊な条件で成立します。
地中海性気候とは、「夏に涼しく乾燥していて、冬に暖かく湿潤である」という気候であり、
日本が「夏に暑くてじめじめ(湿潤)であり、冬に寒くて乾燥している」ことと反対だと覚えるといいでしょう。
したがって、リゾート地のイメージです。
夏に涼しく、冬に暖かいリゾート地。
そのリゾート地でワインを飲みながらオリーブを食べる、みたいな、そんなイメージを持っておくとよいでしょう。
硬葉樹林の代表的な樹木は「コルクガシ(ワインのコルクからイメージ)」と「オリーブ」だからです。
また、このバイオームの図は「年平均気温」と「年間降水量」ですので、
夏と冬の気候の違いはあれど、「一年」でみると「照葉樹林」あたりと似た場所に位置するということです。
しかし、前述したように気候自体は違うため、特殊な表記になっているわけです。
水平分布
バイオームは「年間降水量」と「年平均気温」で基本的には決まります。
日本は「年間降水量が多く、森林になることは確定」です。
あとはどのような森林になるか、の違いであり「年平均気温」を見ればいいということになります。
さらに、日本列島は南北に長く、北海道と沖縄では年平均気温が大きく異なります。
このように、日本列島を北から南に水平に移動した際のバイオームの変化を、「水平分布」といいます。
垂直分布
ただ、気温の変化は「北から南に水平に移動したときだけではなく」、
垂直に移動したときにも起こります。
高い山のうえでは寒い、というあれです。
標高が高いほど寒くなるため、どこか一点をとって
そこから上に垂直に上がっていくときのバイオームの変化を「垂直分布」といいます。
主に本州中部を「一点」とすることが多いですが、
たとえば北海道東部を「一点」とすると丘陵帯(地面)にくるのは「針葉樹林」となります。
さて、実際に登山をしたことある人ならお分かりかもしれませんが、
山頂には森林がありません。
これは「森林を形成できる年平均気温に達していない」ためであり、森林を形成できる境界を「森林限界」といいます。
予想問題
学習効率を優先し、すべて一文の正誤判定となります。
【1】年平均気温が20度以上だとすべて森林が形成される。
バツですね。バイオームは「年平均気温」と「年間降水量」で決まるものです。
たとえば「年平均気温が20度以上」でも雨がほとんど降らなければ、「砂漠」となります。
【2】秋に紅葉する樹木は夏緑樹林である。
◯です。夏緑樹林は冬に落葉するため、葉に残っている栄養素を落とす前に幹に吸収します。
葉緑体もその1つで、葉緑体が葉からなくなるために紅葉します。
【3】沖縄は熱帯多雨林である。
これはバツです。水平分布における沖縄では「亜熱帯多雨林」のバイオームとなります。
【4】硬葉樹林にクチクラ層はない。
バツです。硬葉樹林も照葉樹林のようにクチクラ層が発達しています。
この2つはバイオームの似た位置にくるため、類似性も大きいです。
【5】夏緑樹林の林床の暗さは一年を通して一定である。
バツです。夏緑樹林は冬に落葉するため、春先まで林床が明るいままです。
その後、夏緑樹林が葉をつけ始めると林床は暗くなっていきます。
「カタクリ」という植物はこの林床の変化に上手に対応する植物です。