【生物基礎】免疫グロブリン(抗体)の構造を解説
ココケロくん
んーと。今回は体液性免疫・・。体液性免疫といえば抗体・・。抗体ってあれだよな・・。あのY字型の・・。
ココミちゃん
そうそう。それ。
ココケロくん
抗体に特異性があるってどういうこと・・。
ココミちゃん
あまり難しく考えないで。特異性という言葉が示すのは「相手が1つに決まっている」ということ。
ココケロくん
んー、ということは、抗体が働く相手は1つに決まっている?
その通りです。B細胞が分化して出来る形質細胞は抗体を放ちます。
この抗体は、反応相手である抗原が決まっています。
つまり、抗体Aは抗原Aとしか抗原抗体反応を起こすことができず、抗原Bには反応できません。
ココケロくん
え・・。ということは、世の中にあるすごい数の抗原に対応するためには、すごい数の抗体が必要ってことじゃ・・
特異性があるということは、まさしくそういうことになります。
では、その仕組みを探るために、まずは抗体の構造に着目してみます。
Y字型の抗体を拡大するとこのようになっています。
抗体とはタンパク質であり、そのタンパク質は「免疫グロブリン」と呼ばれます。
抗体には可変部と定常部があり、名前の通り「変化が可能」な可変部が抗原と結合する部分です。
ココケロくん
定常部はあれか。常に定まってる、だからずっと同じってことか。
ココミちゃん
そうね。あとは、抗体は長い部分が2本と短い部分が2本で出来ているわね。この長い方を「H鎖」、短い方を「L鎖」と言ったりするわ。
ココケロくん
ん~、「長い」だから「Long」のL、じゃないの?
ココミちゃん
ざんねん。これは「重さ」なの。長い方が重いよね、だから「heavy」のH鎖。短い方は軽いから「light」のL鎖。でもイニシャルに着目するのはとっても良いことね。
ココケロくん
わーい!褒められた!てことは、可変部を変化させて、いろんな抗原に対応してるんだね!
ココミちゃん
うん。そしてここに秘密と工夫がある。例えばヒトの遺伝子はおよそ2万個だけど、ヒトの持つ抗体の種類は900万種類にもなるの。
ココケロくん
どんなものも遺伝子から作られるはずなのに、抗体は遺伝子の数を超えてる・・・?
その秘密は可変部の「遺伝子再編成」にあります。
まだ完全にB細胞になりきれていない「未分化なB細胞」のDNAには、
「定常部の遺伝子」と「やがて可変部の遺伝子をつくる領域」とが隣接しています。
この「やがて可変部の遺伝子をつくる領域」には、
可変部の遺伝子の元となる「遺伝子の断片」が存在しています。
例えばL鎖を作るDNAには、「V領域」という場所に「遺伝子の断片が100個」、
「J領域」という場所に「遺伝子の断片が5個」存在しています。
そして「未分化なB細胞」が分化する際、
それぞれの領域から「1つの遺伝子断片」がランダムに選択され、
繋ぎ合わさることで、「可変部の遺伝子」が完成します。
L鎖で言うと、「V領域の100個の断片のうちのどれか1つ」と「J領域の5個の断片のうちのどれか1つ」が繋がることで「可変部の遺伝子」となります。
このとき、出来る遺伝子の組み合わせは「100×5」の「500種類」となります。
同様にH鎖でも遺伝子断片が選択され、繋ぎ合わさることで「可変部の遺伝子」が作られます。
H鎖では「V領域の100個の遺伝子断片のうちのどれか1つ」と
「D領域の30個の遺伝子断片のうちのどれか1つ」と
「J領域の6個の遺伝子断片のうちのどれか1つ」が選択されます。
このとき、出来る遺伝子の組み合わせは「100×30×6」の「18000種類」です。
さらに、「どのL鎖と、どのH鎖が」という組み合わせも存在するので、
「500種類のL鎖」と「18000種類のH鎖」で
「500×18000」の「9000000種類」の抗体が生まれることになります。
ココケロくん
なるほど・・遺伝子を切り貼りして組み合わせを変えるわけだ。
ココミちゃん
そうね。だから遺伝子の数を大きく超えた抗体の種類を作り出せる。
ココケロくん
これさ、V領域とか、100個とか覚えておく必要ある?
ココミちゃん
いや、それは大丈夫。ただ、こういう「遺伝子の再編成で可変部は作られる」ということを知っておく必要はあるわ。あと、大前提として適応免疫には特異性がある、っていうこと。
ココケロくん
そっか!わかった!生物って言葉や数字を覚えるだけじゃなくて、その仕組みを理解することも大事なんだなあ~。